ブログタイトルの題字

2016年 7月1日 更新〈第52回〉

 

伊勢志摩サミットの中の            
 沖縄米軍属事件と知事の発言<後編>  

 

実らなかった超党派の県民大会

 伊勢志摩サミットの直前に発生した米軍属による女性遺体遺棄事件は、残念ながらサミットの報道で全国的には打ち消されてしまったが、しかし、6月19日沖縄では同事件に抗議する大規模な県民大会が開催された。
 ところが、県民の期待と裏腹に同事件に抗議する県民大会は、県政与野党の選挙を目前にした政治的な思惑によって、超党派による開催にはならなかった。
 新聞報道によると、主催者側のオール沖縄会議は大会直前まで、自民、公明、維新には正式な呼びかけがなかったという。事実であれば、主催者側には当初から事件と大会を政治的に利用しようという意図があったことになる。そう批判されても仕方がないだろう。また、最近では、「オール沖縄会議」が全面支援する参院選候補者のパンフレットの中に、県民大会の写真と翁長知事の挨拶文の文句が遠慮なく紹介されていることでも明らかになっている。

 主催者のオール沖縄会議を構成しているのは、社民、共産、社大の県政与党が中心だ。今回の事件は日米首脳会談でも提起されるなど、内外情勢にも照らしてどうしても超党派の開催を鉄則とすべきだったが、それよりも党利党略が優先されたことは誠に残念である。 大会が終って、「6万5千人も結集したのだから党派の枠組みは問題ではない」という主催者側を代弁するような識者もいるが決してそうではない。大会の趣旨を実現するには主催する組織体の枠組みがどうなっているか、それによってインパクトが大きく違う。

 今から21年前(1995年)、米兵による少女暴行事件に抗議した県民大会では、超党派による実行委員会を組織し、同実行委員長には保革が一丸となって、当時、自民党所属の県会議長だった嘉数知賢氏を擁立して、大会にはなんと8万5千人を超える県民が結集した。沖縄中が一丸となったあの超党派による県民大会が日米両政府と在日米軍にものすごい衝撃波となり、現在の「普天間飛行場移設問題」が動き出したという歴史的な実績がある。”超党派”が効いたのである。
 だから、県民大会には主催する組織体の枠組みが重要だということだ。
 翁長知事も大会直前まで超党派による開催を模索したようだが、結局は実らなかった。6月5日の県議選で、知事親派の新風会二人の候補者が揃って落選し、オール沖縄内で翁長知事の発言力が弱まったという見方もある。
 極めて重大な大会にも拘わらず組織内に乱れがあったのか、翁長知事の大会参加が表明されたのも大会3日前だった。日米安保を容認している知事が、海兵隊の撤去をスローガンとする県民大会にどのように対応するのか、多くの県民が注目していた。
 ところが、参加の理由づけは相当以上に心労したようで、意味不明、理解不能の説明だった。(6月17日沖縄タイムス参照)
 超党派による開催なら堂々としていただろうが、翁長知事の表情はそうではなかった。新旧思想の絡みあった保革合成の知事という感じだ。

怒り悲しみで心が躍動

 地域差はあると思うが、沖縄には昔から屋外や、病院で人が亡くなった場合、その場所から遺体と共に魂(マブイ)も運ぶという古い習慣がある。
 あの痛ましい米軍属による女性遺体遺棄事件の被害者のご両親もそうであった。尊い一人娘を失った父親が遺体遺棄現場に立って、傷つけられた娘の魂を拾いながら「お父さんだよ。みんなと一緒に帰るよ。お家に帰ろう。」という父親の震え上がった叫び声が強く筆者の脳裏に焼き付いた。
 テレビニュースで見たとき本当に心が引き裂かれる思いであった。その瞬間、歴史的にも負の遺産を強いられてきた沖縄県民として、怒り悲しんでばかりではいられないというやるせない思いで心が躍動した。その思いは筆者ばかりではない沖縄県民の共通した感情だと思う。 
 95年の少女暴行事件。当時の知事だった大田昌秀氏は、在任中テレビカメラの前で「日米安保が日本国民にとって必要というならば、その負担も日本国民全体で負うべきではないか。戦後50年余(当時)も沖縄にだけ負担を強いて、いったい県民はいつまで我慢をすればいいというのか!」大田氏は全身にその怒りをあらわにし、体を震わせて目の色を変えて大声で訴えていたことが昨日のように思い出される。現在の翁長知事も同様のことを訴えているがまったく同感だ。
 県民大会での「怒りは限界を超えた」という、あの会場満杯のプラカードが実にそのことを象徴している。
 敢えて日本政府に言う。
 近年沖縄では米軍属による事件、事故が多発し、辺野古移設を容認する保守層は何かと苦しい立場に立されている。
 超党派による県民大会の開催は敵わなかったが、しかし、安倍政権はそのことに安堵することなく、大会の趣旨を真摯に汲み取り、我が国の安全保障を強固にするためにも、過重な基地負担を強いられている沖縄県民に寄り添い、人情味あふれる施策を速やかに沖縄に施してほしい。そうすることによって米軍地問題にも必ず道が開けるだろう。
 日本が本当に沖縄の祖国であればこそもだ。

< 完 >

次回は8月1日更新。毎月1日定期更新。その他必要に応じて随時、適時に更新いたします。どうぞ、時折に本ブログをお開きください。

 

神山吉光 沖縄事務所 〒902-0068 那覇市真嘉比3丁目14番7号(602) フリーダイヤル 0120−885−989 本人直通 070−5536−8137 FAX 098−885−4570