2017年 6月10日 更新 〈第63回〉

知事の焦りの中の象徴的な裁判

 沖縄には、昔から「イチン、タッチン、ウララン」という俗語がある。急いで対応しなければならない問題だが、なかなか妙案が浮かばない。「思いが思うように定まらない」という大意だ。

 正に、その俗語が現在の翁長知事の心境を雄弁に物語っている。

 翁長知事は、辺野古の埋め立て承認撤回への期待が日増しに高まるで、「撤回」ではなく、岩礁破砕行為を伴う工事の差し止めを求める訴訟を7月にも起こすようである。

 県は昨年12月に、最高裁の違法確認訴訟で敗訴してから、最近までは沈黙を守っていたが、知事には「とにかく何かをしなければならない」という焦りがあった。そういう中での象徴的な提訴である。

 行政能力の限界なのか。なかんずく辺野古問題は、護岸工事が進行する真最中でまたも司法の判断を仰ぐことになる。

提訴の効果は限定的

 翁長知事は、記者会見で「最高裁で県の敗訴が確定したから、国が自由に何でもやれるということではない。無許可での工事が始まっており、県として工事 の差し止め訴訟が可能と判断した」と、国を相手に再び法廷闘争に持ち込んだ理由を淡々と説明したが、そのことは、翁長知事の辺野古阻止の意気込みが今も衰えてないことを内外に示す効果はあっても、それ以上の効果はどうも期待出来ないような気がする。

 なぜならば、国に対して、知事の許可を求めるという今後の訴訟は、そもそも裁判の審理対象とはならず、訴訟自体そのものが成り立たないという最高裁の不動の判例があるからである。

 知事や県の代理人はそのことも熟知しながらのことだろうが、しかし、高いレベルにある複数の司法関係者によると、県の提訴が最高裁の判例を覆すだけの理由がなければ、県の提訴が門前払いにされる可能性が高いという。それでもどうして知事が提訴の判断に踏み切ったのか不可解がある。

 翁長知事には、自らのパフォーマンスだけで県民を煽のではなく、また、辺野古に限らず米軍基地問題では日米の狭間で浮き足立つこともなく、冷静に落とし所を見通した上で、しっかりとした戦略を練って欲しいものだ。

 そうではなく、裁判を繰り返すだけでは、血税の無駄遣いが重なるだけである。翁長知事は、改めて政府交渉に軸足を移すべきである。

おわりに

 折しも、翁長知事が裁判提訴の記者会見を行った(6月7日)は、衆院議院運営委員会で夏のクールビズ期間中は、沖縄の正装「かりゆしウェア」を着用した議員の本会議出席が認められるようになった。

 今後は限定的ではあるが、本会議場でも沖縄のかりゆしウェアを着用した議員の姿が見られるようになる。安倍内閣の全閣僚もかりゆしウェアを思い思いに着用して閣議に臨んだ。

 涼しいはずの「かりゆしウェア」だが、何となく細やかではあるが、政府の沖縄に対する温かみが感じられる。

 また、詳細は省くが、最近でも政府は経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の中で、沖縄関係では当初の素案にはなかった人材育成の推進を盛り込み、「普天間高校を活用した人材育成拠点の形成を図る」ことを明記することにした。

 従って、内閣府は普天間高校の移設に関して、沖縄振興一括交付金を活用して、用地の取得を全面的に支援することになった。同時に同「骨太の方針」の素案にはなかった米軍那覇港湾施設の浦添埠頭への移設についても、沖縄側の要請で着実に推進を図ることも追加で明記するようになった。

 このようにどうも安倍政権は、沖縄二紙が報道するように、まんざら「辺野古強硬」だけではなさそうだ。ところが、普天間移設問題では沖縄と同じく随分と頭を痛めている事だけは間違いないようである。

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