2017年 11月7日 更新 〈第68回〉

政治は国民を映す鏡〜無知な国民が政治家の劣化を生む 野党第一党の醜い分裂と国民の自負

 突然の衆院選。希望の党を中心とする野党は一丸となって、自民党の政策と安倍一強政治を批判して選挙に臨んだが、国民の審判はそうならなかった。

 また、大方のメディアも安倍政権批判に風を吹かそうとしたが、国民の厳粛な審判にはどうしても敵わなかった。

 結局、選挙は自民党が過半数を遙かに超えて284議席、自公で313議席も獲得して与党が大勝したのだ。野党分断の起因を構築した小池新党が、結果的には安倍政権の勝利に功を奏したのである。

 確かに、比例区で与党は全野党の全国的な得票率では劣るが、しかし、日本は歴然とした議会制民主主義の国だ。制席と国民の審判は崇高であり、選挙結果は何人も否定することは出来ない。安倍一強政治と野党多弱もまた、選挙の結果から生れた賜物である。

 それよりも批判されるべきは、選挙直前に当選するがために自らの信念を捨てて、私利私欲に走った野党第一党の醜い分裂劇、すなわち、総体として政治家の劣化だ。そして、とうとう選良をここまで至らしめた国民の自責である。 

 サミュエル・スマイルズの遺した不朽の名著「自助論」には、次のようにある。

 <一国の政治というものは、国民を映し出す鏡にすぎません。政治が国民のレベルより進み過ぎている場合には、必ずや国民のレベルまで引きずり下ろされます。反対に、政治のほうが国民より遅れているなら、政治のレベルは徐々に上がっていくでしょう。国がどんな法律や政治を持っているか、そこに国民の質が如実に反映されているさまは、見ていて面白いほどです。これは水が低きにつくような、ごく自然の成り行きなのです。立派な国民には立派な政治、無知で腐敗した国民には腐り果てた政治しかあり得ないのです。>

 この頃は、若い政治家の堕落、不祥事が本当に多過ぎる。要するに、優秀な政治家を育てる責任の一端は、私たち国民の側にもあるということだ。

      ーーーーーーーーー<神山吉光が吠える・特別企画>ーーーーーーーーーーー

雑誌『沖縄世論』編者対談 回想録 山中貞則 初代沖縄開発庁長官 わが思い わが沖縄 &神山吉光① 〜編者対談で明かす沖縄戦後史の空白と史実の裏側

山中 相談に行くなら沖縄県民のところ、沖縄へ相談に行くよ。実際に何度も足を運んだでしょう。(笑う) そうだ!特に困ったことといえば、そうそう、あの時ぐらいのことかな。

神山 それはどういうことでしょう。

山中 ほら、あの通貨交換です。沖縄の本土復帰にともなってドルを日円に切り替えたでしょう。また、ドル交換のレートを区分するために沖縄で流通している一部のドル紙幣にスタンプを押したのを覚えているでしょうか。

神山 ええ、よく覚えています。確かにそのようなことがございました。

山中 アメリカ政府から「通貨の切り替えとは何事か」「しかも、独立国アメリカの通貨(ドル)に外国(日本)のスタンプを押すとは何事か」と我が政府に抗議が来たんですね。確か、一度は電話、二度目は文書だったと記憶している。その時だけは私も困ったし、総理もお困りになっていたと思う。私は辞表を用意していたくらいだから。

神山 アメリカ側では、主権の侵害とでも言いたかったのでしょう。ところで、その抗議に対して政府としては。

山中 アメリカから抗議が一つや二つ来たからといって方針を変えることはしません。佐藤総理もそう言われましたよ。「山中君、ときにはアメリカの頭越しにやるのも気持ちいいね。構わないから君の思うように、やりたいように大いにやってくれ!」と。

神山 「時にはアメリカの頭越しに…」佐藤総理の言葉はなかなかの意味深です。当時のニクソン大統領のことを思い出します。(日本を頭越しに中国へ行ったこと)

山中 そうです。あのキッシンジャー国務長官が北京に秘密工作してきたその直後に、ニクソン大統領が日本を頭越しに中国へ飛んでいった。あのときのアメリカの外交手法に佐藤総理はよっぽどいやな思いをしたようです。

神山 ニクソン大統領が中国に飛んでいったときは、自民党内も大騒ぎ、国会でも野党からは迫られる、佐藤総理は実に不眠不休の連日であったという。総理の「山中君、君の思うように、やりたいように大いにやってくれ!」と言う言葉はその時の総理の心境を察するに充分です。

山中 一国の通貨はその国の施政権を象徴するようなもので実際は大変のようです。しかも一部分とはいえ外国の通貨を汚染するんでしょう。それは(あの時のことは)世界の通貨史上に永々と記録されると思いますよ。

神山 アメリカの文化人の中には、「世界でも美しい=日の丸=の国旗を持つ紳士の国がまさか外国の通貨を汚染するとは理解し難い」と評する者もいたようです。もし、東京・大阪など大都市であのような通貨汚染が行われていたらそれこそ国際問題にまで発展し、佐藤内閣は大火傷をしていたのでは?

山中 ああ、なんと言うことはない、その程度のことは覚悟のうえです。私は以前に佐藤総理にも言いましたよ。「アメリカの圧力で通貨の交換が予定通りに進まなければ私は辞めますよ。でも、総理、これだけ(汚染通貨の交換も含む)は実現してくださいよ」と。それに対して、総理は「山中君、時にはアメリカの頭越しにやるのも気持ちがいいね……」とかえって私を激励されたのです。

神山 もしもあの時、国際通貨基金によって汚染された通貨は無効だと宣言されたらどうしましたか?

山中 用意周到に準備していましたから何時でもどうぞということです。その心構えは十分にできていました。私は総理に言ったんです。「総理、沖縄の汚染通貨は日本円に換算して約三百五十億円程度(当時)だと思います。万一それが無効という宣言がでたら、それをそっくり日本銀行で買い取ってくださいよ。そうしないと沖縄県民に大変な損失を強いることになりますよ」と。総理は「分かった。その時は日銀にその全部を買い取ってもらう、その程度のお金で沖縄県民に及ぶ損失が防げるならそうしよう」と即答された。それでこの問題の心配は無用というわけです。

神山 それは実に完璧です。

山中 それから、あと一つだけ今思い出したのがあります。それは、沖縄復帰の翌日五月十六日のことです。復帰の式典はご承知の通り東京と沖縄で十五日に同時刻に行われましたが、総理は東京の式典に、私は沖縄の式典にそれぞれ参列し、私が戻ってきてからの閣議のことです。今日まで沖縄のことについてはまったく私に任せきりで何も言われなかった総理が「山中君、沖縄は通貨の切り替えに伴って社会混乱を起こしているようだね。どうだろうか」と、聞かれた。買う人も沖縄県民であれば、売る方も沖縄県民そこは自ずと一定のコンセンサスが生れます。しかし、不足している物資は速やかに補充しなければなりません。それも私の出身の鹿児島にある南九州畜産工業から豚肉等を積んだ船が沖縄に向かい、もう今頃は先発の船が那覇の港についている頃です。そういうことで物資不足は次第に解消していくと思います。後は日常のことで、それはもう時間とともに落ち着きを取り戻してきます」そうしますと総理は「もう、そこまでやっていたのか」の一言です。さすがに、何も言われない総理でも常日頃の情報だけはきちっと取らせてあるんですね。私の在任中に、佐藤総理が沖縄問題で私に何かを言ったり聞いたりしたのは後にも先にも記憶にあるのはこの二回だけです。

神山 ニクソン大統領と佐藤総理が昭和四十四年十一月に会談し、そこで、「両三年内には沖縄返還が実現する」という日米共同声明が発表され、その後わずか二年余の準備期間をおいて沖縄が復帰します。当時、沖縄県民の一部には復帰準備が遅れたらそれこそ本土復帰そのものも一年や二年先に延びるのではないかとの不安を抱く者もいました。しかし、二年間で見事にそれが完遂されあのような形で沖縄が復帰してきます。わずか二年余という短い期間でどうしてあれだけの仕事が完遂されたか、それを知るということは復帰史の全体を見るうえで大変に重要なことだと思います。私は屋良主席の政治力を問題にしようとは毛頭考えていません。要するに、沖縄の復帰準備が極めて順調に進められたということは佐藤総理と山中長官の不動の信頼関係が基礎となったあの固い約束が功を奏したと考えます。

(次回第4回へ続く)

神山吉光 沖縄事務所 〒902-0068 那覇市真嘉比3丁目14番7号(602) フリーダイヤル 0120−885−989 本人直通 070−5536−8137 FAX 098−885−4570

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