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2018年 3月1日更新 〈第72回〉

名護市長選挙に見る 沖縄二大紙の報道実態<中編>

はじめに

   決して目障りという訳ではないが、那覇新都心地区の比較的高台にある筆者の自宅マンションからは、否応なしに琉球新報と沖縄タイムスの本社ビル(方向)が眼下に広がる。

 歴代の社長とは、一定の距離感を保ちながらそれなりの交流はあったが、どういう訳か、現在の両社の社長とは面識はあるものの、ほとんど交流がない。ある面それだから両紙の批判が気楽に書けるということにもなる。

 いみじくも過日、在京の心ある大先輩から「過剰に新聞批判をしていると、親近者が新聞社に入れなくなるぞ」と言われたので、「そこまで沖縄二大紙のレベルが落ちるとは思わないが、それならば、その前に『沖縄から二大新聞が消える日』という本を出しますよ」と言い返したら、「それも止めた方がいい、しかし、本が出たら真っ先に送ってくれよ。」と言われ、大笑いしたことがある。 

 さて、前回に続いて「名護市長選挙に見る沖縄二大紙の報道実態」に移ろう。

特定候補者への投票依頼を示唆した紙面

 ここでは、凝縮した結論的な記述になるが、先ずは沖縄タイムスだ。

<―K9工事(新聞では「同❶」と表記)の埋め立て海域には、美謝川の河口が存在することである。そのため国は河口変更を行えなければK9工事(❶)の埋め立て工事が行なえないという苦しい立場に立たされている。
2月に名護市長選挙が予定されているが、新基地建設に反対する稲嶺市長が当選すれば、国はK9工事(❶)の埋め立てが行なえないことになる。」更に昨年9月には、K9工事護岸およびA護岸工事の海域(大浦湾側)に活断層が存在する可能性があるとの専門家の指摘も報道されている。―>

 これは、告示直前の1月15日の沖縄タイムスに掲載された新垣勉氏の「新基地建設阻止に向けて」と題した論考だ。筆者はこの一文を読んで驚いた。「稲嶺候補へ投票を頼みます。」とは書いてないが、稲嶺候補への投票依頼を唆した誘導記事であることは誰の目にも明らかである。

 新垣氏は、弁護士を職業として翁長県政を擁護し、辺野古新基地反対派の理論構築を担っている中心人物だ。新垣氏の論考全体の趣旨は、新基地建設阻止に向けた県民世論の喚起と県民投票の戦略議論の意義を提起していることになっているが、その中で「2月に名護市長選挙が予定されているが、新基地建設に反対する稲嶺市長が当選すれば、国はK9工事(❶)の埋め立てが行なえないことになる。」が主語的になって特定候補への支持を誘導しているところに問題がある。 

 新垣氏の本論考の掲載日が選挙告示の直前であり、良識ある寄稿者ならばその部分を削除すべきであったが、それよりもそのような選挙の集票とも疑われるような論考をあえて掲載した新聞社側に大きな責任がある。具体的な指摘は他の機会に譲るとして、新垣氏の論考は1月15日から3日間上中下の3回に分けて連載されているが、概ね全体として稲嶺候補の公約である辺野古新基地建設阻止の指針を示した具体的な内容である。

人気作家による異例な論考構成

 琉球新報も同じ類だ。同紙からも一例だけ拾っておこう。

</ー名護に入る日本人著名政治家の誰もが、自分こそが真に名護市民の味方で、沖縄県民の味方であるような顔をする。しかし、そういう人たちが、普段、名護市のことをどれだけ真面目に考えているのかという疑問が筆者には浮かんでくる。
/名護市長選挙における真実の争点は明白だ。中央政府が強行する辺野古新基地建設に正面から異議を唱え続け、沖縄に対する構造化された差別を脱構築する意思を示すか、それとも辺野古新基地建設問題を迂回し、中央政府に対して服従する意思を暗に示すかだ。
はっきりしているのは、中央政府に擦り寄ったからといって、あの人たちの沖縄に対する姿勢が変化することはないことだ。辺野古新基地建設の強行に象徴的に示される中央政府による沖縄への強圧的、差別的政策は今後も続く。
/筆者は名護市民ではない。従って、今回の選挙で投票権は持たない。しかし、東京に住む沖縄人として、そして、言論活動を通じて中央政府による沖縄に対する差別政策を変えさせようと努力している有識者として、今回の名護市長選挙に重大な関心を持っている。しがらみにとらわれず、各人の良心に従った投票を名護市の有権者が行うと信じている。ー>

 これは、あろうことか投票日の前日(2月3日)に、琉球新報が掲載した「佐藤優のウチナー評論」の―争点は明白に辺野古新基地―と題した論考の一部である。

 候補者の名指しこそしてないが、新基地反対を公約に掲げた稲嶺候補の支援記事すなわち投票依頼であることは明々白々だ。

 琉球新報は同じ紙面スタイルで1月31日にも「反基地闘い支持」と題して、ゴルバチョフ元ソ連大統領の論考も掲載している。

 新聞社が特定政党、特定候補者を支持することは自由だ。しかし、そのことを紙面で露骨に表現することは自らの新聞網領にも反するのではないか。ましてや中立性の堅持と高く公平性が求められる県紙であれば尚更のことだ。

 筆者が、都合のいい部分だけを取拾選択して批判していると思われても困るので、若し、読者の皆さまのお手元に当該の両紙があれば、改めて全体を注意深く読み直して欲しいと思う。

 次に、両紙の選挙前後における紙面展開を見てみよう。

<次回(第73回)4月1日更新に続く>

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