解り安く、面白く、パンチの効いた時事評論

神山吉光が吠える

2014年8月15日更新 〈第19回〉

この頃 思うこと 考えること <沖縄県知事選雑感>

その時々で真も逆なる。

 「日米安保が国民にとって必要ならば、その負担も国民全体で負うべきではないか、戦後五十年余り、沖縄にだけ犠牲を強いて、いったい沖縄県民はいつまで我慢すればいいと言うのか。」 これは、大田昌秀元知事の在任中の象徴的な発言の一部である。 その時、大田氏は全身で怒りを露にし、体を震わせていた。テレビ画面を見ていた多くの県民がそれに引き寄せられ、この発言部分に限っては彼に共鳴したのではないか。 大田元知事の言っていることは当然のこととはいえ、国に向かって、沖縄県民の心を堂々と代弁していたあの姿は実に勇ましかった。        16年前の沖縄県知事選の頃である。当時、あの怒りの会見から、大田氏の人気は益々上昇し、全国的にも「時の人」となり。「沖縄の大田がどこまで国に食い下がって行けるか、それが見物だ」と言う同僚知事もいた。 これどころか「沖縄の大田知事を将来の首相候補に」とはやすメディアまでが出てきて、一般に大田氏の三選は動かないものと見込まれていた。 その一方、知事選を目前にした保守陣営は、大田氏の高まる人気に圧倒され、大田三選にぶつける候補者が見つからず、又、手を上げる者もおらず、一時は、立ち往生の時期があった。 そこで、保守陣営がどのようにあがいても、大田三選は動かないものと見た自民党本部では、大田知事と掛け合って大田県政の与党から共産党を外し、その後で自民党県連は大田与党に加わったらどうか、ということも党本部と県連の一部では模索されていた。 ところが選挙結果は経済界から立候補した自民党推薦の稲嶺恵一氏が初当選を果した。   当時、保守側稲嶺氏の立候補表明までは様々な経過があり、選挙戦も大激戦で展開されたが結局沖縄県民はごうごうたる基地反対の嵐の中でも “経済”を選択したのである 筆者はなかんずきながらも“基地反対”か“経済”かという最近の情勢に相通ずるものを感じる。   すなわち昨今の世論調査によると、“辺野古反対”が70%を超えているというものの、それがそのまま選挙結果に反映されるとは必ずしも限らない。 従って、11月の知事選挙でも沖縄県民は県政全般ではその時々によって“基地反対”ではなく、“経済優先”を選択する可能性も決して否定出来ないということだ。確かに、一面的には新聞の報道も過大すぎるが、辺野古反対が沖縄の民意であることだけは紛れもない事実である。

「島ぐるみ会議」と仲井真知事に問う。

  さて、この頃ちょっとだけ吠えておきたいことがある。 先ずはあの「島ぐるみ会議」のことだ。すなわちオスプレイの配備撤回と普天間飛行場の閉鎖・県内移設断念を求める「沖縄『建白書』の実現を目指し未来を拓く島ぐるみ会議」の昨今の動きである。報道によると7月27日にその結成大会を開き、その日を節目に11月知事選までは活動を休止するという。若し、本当にそうであれば一体何の為の組織なのかと言いたい、ならば11月の知事選後に結成大会を開いてもいいのではないか。「辺野古強行を止めよう、沖縄の心をひとつにー」という素晴らしいテーマを決定しながら、結成大会まではマスコミに出没して、その後は正体が見えないようでは夏の幽霊みたいな組織と言わざるを得ない。 そうではなく、沖縄の魂を国にぶつけるという崇高な目的をもった「島ぐるみ会議」ならば、あの歴史的な「建白書」の精神を推進する候補者が出れば、それこそ「建白書」の実現を目指して全組織の総力を結集して選挙戦に臨むべきである。同組織の今後の動向を見守ることにする。        一方、仲井真知事は決して逃げることなく、積極的に三選出馬を早目に表明し、自ら下した「辺野古承認」に堂々と信を問うべきである。 また、自民党本部の石破幹事長は西銘県連会長の仲井真擁立案に対して首を傾げたようだが、もうこれ以上に沖縄地元の声や意向をねじ曲げない方が得策でしょう。沖縄県民には未だに、昨年暮れのあの自民党県出身の5国会議員を連座させた記者会見の模様が生々しく脳裏に強く焼きついている。

「現代沖縄の知事像」、候補者も自己診断を。  

 沖縄県庁太平洋戦争の忘れ物のように、日米安保の要となって、沖縄には不幸にも巨大な米軍基地が現存している。 この現実は平和のための負の遺産として誰にも否定する事が出来ない。反面、この島々には限りなく広がるエメラルドの海があり、又、何ものにも換えがたい澄みきった青空がある。 これらの素晴らしい自然環境は、本土の人々が絶賛するように、他では見られない沖縄特有の財産と言えよう。
 しかし、この島々に住む人々の生活水準は依然として全国最下位なのである。基地の整理縮小は言うまでもない。それが現存する間は、基地と自然と県民生活が効果的に調和するような極意の県政運営を見つけ出し、新知事は先ずは直面する普天間基地問題の解決を急がなくてはならない。 新知事が誰であれ、基地の整理縮小は沖縄県政の現実的な最重要課題であり、従って、怠ることなく課題解決の応急処置をどんどんと施すべきである。 かかる現代沖縄の指導者は、沖縄の未来像をしっかりと描ける強力な政治力量と行政手腕のもち主でなければならない。候補者にも自己診断を求める。 さあ、知事選前夜。間もなく沖縄では秋の大政治決戦を迎える。 真夏の猛暑に負けることなく、情報アンテナを作動させながら候補者たちの出馬表明を待つことにする。