2018年 5月1日更新 〈第74回〉

 4月27日、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と韓国の文在寅大統領が板門店の韓国側施設「平和の家」で会談し、「南北は完全な非核化を通して、核のない朝鮮半島を実現するという共同目標を確認した」とする「板門店宣言」に署名した。また、年内には朝鮮戦争の終戦を宣言し、平和協定に転換するため米国を交えた会談を推進することでも合意。文大統領の今秋の平壌訪問や、共同連絡事務所の北朝鮮・開城への設置、敵対行為の中止でも一致し、一切の武力不行使も確認した。そして、金委員長は全ての合意を「徹底履行する」と約束した。

 正に文字通り歴史的な会談であり、南北の融和ムードも最高だ、しかしそれは文字通り本物だろうか。

 ところが、最大の争点である北朝鮮の核問題について、宣言は、「完全な非核化を通じて、核のない朝鮮半島を実現するという共同の目標」の確認にとどまった。金委員長の共同記者発表での発言も、非核化に関する言及はなかった。

 今回の会談で北朝鮮が現有する核兵器や核関連施設への道筋が示されなかったのは不十分と言える。

 金委員長は先に、核実験の中止や実験場の廃棄を表明しているし、それ以上の非核化の措置は、米朝首脳会談をもって提示するつもりなのだろう。

 従って金委員長が核兵器を温存したまま、対話攻勢で制裁圧力を弱めようとしているのは間違いないのではないか。

 金委員長は北朝鮮の最高指導者として初めて、軍事境界線を越えて韓国に入った。文氏と2人だけで散策する場面もあった。南北首脳会談で目立ったのは、このように会談の実質よりも融和ムードだ。

 宣言では、南北首脳が定期的に会談し、文氏が今年秋に平壌を訪問することが盛り込まれた。ホットラインでも通話を行うという。

 南北の当局者が常駐する連絡事務所を北朝鮮の開城地域に設置することや軍事当局者会談の開催でも合意し、南北間の不可侵の順守も確認されたが、北朝鮮が合意を破り、韓国への武力挑発を繰返した歴史を忘れてはなるまい。

 そして気がかりなのは、宣言が、休戦状態にある朝鮮戦争の終結と平和協定への転換に言及していることだ。南北と米国の3者、または中国を加えた4者による会談を積極的に推進すると言っている。

 読売新聞は、社説の中で「核問題の解決のメドがつかないうちから、北朝鮮の体制の保証につながる平和協定に踏み込むのは順序が逆ではないか。」と主張しているが全く同感だ。

 今回の南北首脳会談を経た米朝首脳会談の結果による沖縄の米軍基地問題の行方も気になるところだ。

 日米両政府は今まで米軍が沖縄に駐留する主要な根拠として北朝鮮の脅威を挙げてきた。2017年度の防衛白書でも朝鮮半島や台湾海峡といった潜在的紛争地域に「相対的に近い(近すぎない)位置にある」という表現で沖縄の地理的優位性を強調してきた。

 また、日米が普天間飛行場返還に合意した1996年に国防長官をつとめたウィリアム・ペリー氏は、今年3月の沖縄県が主催するワシントンでのシンポジウムで、普天間に所属する部隊は、北朝鮮有事の際の韓国侵攻を防ぐ補完戦力と強調。北朝鮮の脅威が消滅すれば、「アジア太平洋地域の安全保障情勢を塗り替え、普天間飛行場の存在理由もなくなる」と率直な意見を述べたという。元米国防長官の発言は重大である。

 従って南北が歴史的に和解し北朝鮮の脅威がなくなれば、日米が主張した米軍の沖縄駐留の根拠も揺らぐことになり、米朝首脳会談の成果によっては、いよいよ普天間飛行場の存在理由が問われる可能性がある。

  米トランプ政権では、早くも米朝首脳会談の成功を見越して在韓米軍の縮小が検討されているという情報もある。

 次回は6月1日更新。毎月1日に定期更新、その他必要に応じて随時、適時に更新いたします。どうぞ時折本ブログをお開きください。

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