解り安く、面白く、パンチの効いた時事評論

神山吉光が吠える

2014年12月1日更新〈第25回〉

 

 

翁長県政はアイデンティティー型の保守

師走の日本列島では先の沖縄県知事選の結果を吹き消すかのように、衆院解散総選挙の嵐が吹き荒れているが、こんな最中でも沖縄では8年ぶりに知事の交代が行われる。

 米軍基地問題を争点として激しく争われた知事選挙で約10万票の大差で敗れた仲井眞弘多知事から、いよいよ翁長雄志新知事への交代である。
翁長氏は那覇市会の大半の保守系(元自民党)議員と、県政野党の支援を得ての立候補であったが、しかし、彼は選挙中に「保守は保守でも沖縄の保守」であることを強調しており、たとえ支持母体の大半が革新であっても政治信条と県政運営に当たっては、これもまたブレることなく従来からの「保守」であることには間違いない。
 翁長氏の支持母体となった革新側には些か耳障りかも知れないが、この事は副知事人事(オール保守)をみただけでも実に明らかである。
 また、翁長氏は「イデオロギーよりもアイデンティティー」ということもしばしば主張しており、この事も今後の県政運営を見る上で重要だ。
 総じて、今回の知事交代は従来型の保守から革新への交代ではなく、また単に保守同志の移譲でもなく、強いていえば保守県政から保革合同のアイデンティティー型の保守への交代と言えよう。

 さて、新聞報道によると翁長氏は、12月10日の知事就任を前に県の各部局から、それぞれの最重要課題の説明を受けるなど県政運営の予習に余念がないようだが、これも意欲満々、誠に結構である。
 だが、部局の担当者は辞めていく訳でもないので、今行っている部局からの説明会は知事就任後にいくらでも出来るはずだ。従って、翁長氏が今急いでやるべき事は来る9日にも退任する仲井眞現知事のところへ、直接自身から出向いて行き、直面している最大課題、すなわち沖縄防衛局が県に提出している辺野古の設計変更申請の扱いについてしっかりと話し合うことである。

翁長氏は仲井眞氏と直談制で臨め

 前稿(「神山吉光が吠える」第24回)の主旨を繰り返して、ここで改めて強調しておく。
 翁長氏の立候補の原点は、現在も強行されている普天間の辺野古移設工事を日米両政府に断念させることにある。
「あらゆる手法を駆使して、辺野古に新基地は造らせない」ということは、日米両政府に対して、ありとあらゆる手段を講じてでも辺野古移設を断念させるということであり、そのことはそのまま翁長氏の選挙公約であり、沖縄県民との尊い契約でもある。「あらゆる手法を駆使して」、辺野古移設を断念させるというならば、それでは翁長氏は12月10日の知事就任を待たずに当選の翌日からでも仲井眞知事に直接ご自身が会って、現在、県で審査中の辺野古移設に関する許認可は全て新知事就任時までは許認可することなく留保するよう強く申し入れることである。翁長氏はこの事前行動を就任前の重大な初仕事として捉えるべきである。
 仲井眞知事が残る任期中に全ての許認可事項にOKを出してからでは後の祭りだ。そうなれば翁長氏は選挙には勝っても、肝心な辺野古問題に関わる政治力では仲井眞氏に負けたことになる。仲井眞知事にテーブルを叩いて直談判する気迫がなくて、どうして日米両政府を説得して辺野古移設を断念させるというのか。今からでも遅くはない、翁長氏が仲井眞知事と知事就任前に直談判するのか、しないのか、出来るのか、出来ないのか、選挙期間中に辺野古反対をあれほどに強調していた翁長氏の本気度がいよいよ試される場面でもあり、残る数日間の翁長氏の行動を引き続き見守りたいと思う。

 退任する仲井眞知事の実績も素直に評価したい。特にこの2期目の4年間では、雇用の拡大や一括交付金の獲得、観光客の増大、そして21世紀ビジョンの策定など、その評価には保革を問わず衆目が一致しているのではないか。仲井眞さんには8年間お疲れ様でした。どうぞ肩の荷を降ろして素晴らしい新年をお迎えください。
 最後に翁長氏の「イデオロギーよりもアイデンティティー」という主張にも改めて大いに共鳴したい。従って翁長氏には今後も県政運営に当ってはその尊い精神を堅持し、140万県民が乗船している〝沖縄丸〟の進路を決して誤ることなく、間違いのない方向に航行させることを重ねて強く求めるものである。

(次回は衆院選挙後の12月18日に臨時更新します。定期更新は毎月1日・15日。)