解り安く、面白く、パンチの効いた時事評論

神山吉光が吠える

2015年1月15日〈第28回〉

 

 

 

安倍政権の「翁長いじめ」とは決して言えない順当な予算額

 1月14日、注目されていた翁長県政初の政府沖縄振興予算案が閣議決定された。安倍政権は、米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する翁長雄志知事をけん制する狙いから2015年度の沖縄振興予算を大幅に減額するのではないかと報道されたが、そうではなかった。
 国の厳しい財政事情の中で、沖縄振興予算案は14年度の3501億円に比べて15年度は162億円減の3340億円に留まり、その比率は本年度の95,4%だ。菅義偉官房長官は14日の記者会見で。2015年度沖縄振興予算案が162億円の減額となったことについて「不用額、繰り越しがかなり出ている。それを精査した」と述べ、財政規律上の理由だとした。
 また、翁長雄志知事が米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対していることが理由ではないかとの批判に対しても「まったく当らない。現に仲井眞弘多前知事と約束した3千億円台は確保した」と説明。「仲井眞前知事と安倍晋三首相が約束したのだから、しっかりと対応していきたい」と述べ、安倍首相が表明している、現在の沖縄振興計画が終了する21年度までは3千億円台の確保は維持すると明言した。

 その一方、辺野古移設反対で当選した翁長雄志知事も、14日政府の2015年度沖縄振興予算案決定について次のような談話を発表している。「沖縄振興を推進するための経費として3千億円台が確保され、沖縄振興一括交付金や那覇空港滑走路増設事業で所用の額が計上された。北部振興事業や鉄軌道導入の調査費も引き続き所用の額が計上され、本県の振興に配慮がなされた。税制改正では県の要望が全て認められ、格段の配慮をいただいた。予算や特別措置を積極的に活用し、さらなる沖縄振興を図る」
 また、翁長知事は「国の財政状況が厳しい中で県の努力も求められている。13年度並みの額が確保されており、しっかりと対応し沖縄振興に役立てたい」とも強調している。 
 辺野古移設問題で安倍政権と対峙している翁長知事もこのように2015年度の政府沖縄振興予算案については、安倍政権の格段の配慮を強く認識しており、また、県内経済界も好反応で一定の評価をしている。
 従って、県選出野党の国会議員はいろいろ批判しているが、注目されていた2015年度の沖縄振興予算案は比較的に順当な予算額と言える。

予算獲得で翁長知事を支えた自民党国会議員

 政府は辺野古移設を容認した仲井眞前知事時代の14年度予算案では概算要求を上回る額を計上したが、知事選で辺野古移設に反対する翁長氏が当選すると態度を硬化。一時は3100億円まで減額することも検討していると報道された。ところが山口沖縄担当相や県関係の自民党国会議員や公明党などから「必要額の確保」を強く求められ、3300億円台まで上積みすることで決着したという。事実、県関係の自民党国会議員は相当以上に骨を折ったと聞いている。

 一方、予算獲得に関して、どういう訳か野党側の県選出国会議員の動きがまったく見えなかったのは残念だ。翁長知事も公約している通り、「沖縄21世紀ビジョン」の実現には国の財政的な支援が絶対に不可欠であり、2015年度予算の獲得には野党議員もあの知事選と同様に一丸となって翁長知事を支えて欲しかった。

 ちなみに衆議院を例にとると、去った12月の衆院選で翁長氏が支持した沖縄4選挙区で当選した4議員の衆議院での政党所属議員は、社民2人、生活2人、共産21人に無所属の仲里氏を含めても合計でたったの26人であり、この程度の勢力ではどうにもならない。残念ながらその非力は実に明らかだ。そこら辺を承知して〝他府県に負けてたまるか〟と自民党議員が予算獲得に動いたのには本当に感謝する。
 新聞では報道されなかったが、政府自民党筋によると今回の予算獲得で大きく尽力したのは翁長派(野党4議員)ではなく、去った知事選と衆院選で激しく戦った自民党4議員と自民党県連であったという。

 「武士の情け」というものか、その「情け」は今後の翁長知事の県政運営の心得にも少なからず影響を与えるであろう。

 最後に、県外読者の為にも、沖縄振興予算に関する明治大学の池宮城秀正教授の識者談話を次ぎの通り紹介しておく。(1月15日琉球新報)

「県財政に大きな影響ない」

<2015年度の沖縄振興予算は前年比161億円減額となったが、総額は一定程度確保されており、県民生活や県財政に大きな影響を与えることはないと考える。国の財政状況も勘案すると、不用額や繰越額が多いということも減額理由としては理屈にかなっている面もある。沖縄振興予算の問題点は、沖縄が他府県に比べて国からの財政移転を過度に受けているという誤解が生じていることにある。
 12年度決算でみると、地方交付税、国庫支出金、地方譲与税などを含めた県財政における依存財源の人口1人当たりの額は約33万8千円で47都道府県中12位で、財政力指数0,3未満の類似10県で比較するとかなり低い。「沖縄振興予算」という呼称も問題だ。沖縄が特別に多くの財政移転を受けているという印象を植え付けてしまっている。特に本土では、沖縄は他府県が通常受けている財政移転に加えて別枠で3千億円台の予算をもらっていると誤解しているという人もいる。「県の国庫支出金と国直轄事業費等」という言葉を用いるようにしてはどうか。
 自民党の細田博之幹事長代行が「沖縄県民1人当たりの国の財政は(細田氏の地元)島根県の10倍以上あるんじゃないか」と話したという報道があるが、実際には12年度の島根県財政における人口1人当たりの依存財源は50万4千円で全国2位だ。沖縄よりはるかに大きい金額だ。そもそも国庫支出金は国策を推進する狙いがあり、国が「米軍基地立地と関係はない」と言っても、事実上のリンクがあるのはある意味で当然ともいえる。ただ復帰後42年以上が経過し、社会資本が一定程度整備された現在、県民は補助金の増額に一喜一憂することなく、淡々と受け止めることが大切だ。>

 これは池宮城氏の新聞談話だが、沖縄が他府県に比べて国からの財政移転を過度に受けているという誤解の具体的な指摘や「沖縄振興予算」という呼称の問題、そして、予算と基地がリンクする意味合いなど池宮城氏の指摘には全く同感である。