解り安く、面白く、パンチの効いた時事評論

神山吉光が吠える

2015年4月15日更新〈第33回〉

 

安部総理の用意周到な政治手法

ー その延長線上にある沖縄の米軍基地問題 ー

 

着実に実を結ぶ政治手法

 安部晋三内閣総理大臣は自民党長期政権の政府見解を変えて、集団的自衛権の行使容認を閣議決定するなど、一見して狼突猛進形の政治のように見えるが、決してそうではない。よくよく考えてみると、むしろその逆のような感じがする。
 そもそも、集団的自衛権の行使容認問題は第一次安部内閣の時代から安部総理の頭の中心にあって、練りに練られた計画が現在進行形で進行しているのに過ぎない。それは第一次安部内閣時代の総理の言動とその後の安部氏の発言を振り返り分析すればよく分かる。
 また、昨年12月の衆院解散総選挙も、表だっては突然のように見えたが、安部総理には前々から周到でしたたかな目論見があった。そのことは総選挙前後にメディアでも取沙汰されたので、多方の理解の範囲だ。
 日本は「戦争の出来る国になった。」と野党側はよく言われるが、政府自民党では日本は「今になって、ようやく自らの国は自らが守る国に動き出した。」というのが、ほぼ共通した認識である。自民党内がハト派も含めて、このように一致した共通認識に向かいつつあるのも、実は安部総理の周到な用意の賜物と言える。
 国民の反発が予想されるという、安全保障法制の与党内協議をあえて4月の統一地方選挙後に設定したのも与党が勝利する為の戦略であった。その結果、与党は全国的にくまねく勝利し、野党は昨年の衆院選と同じく萎んでしまった。安部政権の用意周到な政治手法は現在のところ着実に進行し、沖縄の基地問題もその延長線上にあることを翁長知事は早めに理解しておく必要があろう。

菅・翁長会談の評価

 去る4月5日に行われた菅義偉官房長官と翁長雄志知事の会談も取りあえず、あのような結果で終わっているが、政府には今後の展望を先読みした、したたかな目論見があるような感じがする。会談の前日(4月4日)、菅官房長官は基地問題担当の安慶田光男副知事をホテルに呼び出し、密室で2人だけの事前会談を行っている。実はこの事前会談で翌日の本会談の方向性は既に定まっていたと筆者は見ている。
 要するに、今回の初会談は菅・翁長両氏の顔を立てた勝負なしの引き分けで終わらせることが、決まったということだ。
 菅官房長官にしてみれば、安部総理の訪米を目前にして、今回の菅・翁長会談で、辺野古推進の強行姿勢を緩めるような印象だけは絶対に避けたかった。この目論見が成功したのである。
 翁長知事からすれば、東京ではなくて、沖縄現地での会談であり、沖縄県民に対して政府に譲歩したような印象だけは何が何でも避けたかった。勝負は次回からという思いが実ったのである。
 従って、今回の会談は双方がおのおのの立場を明確に主張し、双方の顔を立てることに主眼がおかれ、辺野古問題そのものには何ら前進も後退もなかった。
 強いて言えば政府側では沖縄の事情も聞きながら辺野古の工事は進めている、ということを国民にアピールすることが出来た。沖縄側では知事が代表して言いたいことは言った、というのがせめてもの収穫と言える。
 今後の動向にも大いに注目するが、いずれにしても沖縄の米軍基地問題も安部内閣の用意周到な政治手法の延長線上にあることだけは間違いなさそうである。